「空閑くん、お誕生日おめでとー!」
「あ、ありがとうございますっ!!」
「ほらよ、お前にやる」
「! (こ、この、包み紙って……)」 (表情:困惑)
「? 何だよ、何固まってるんだよ」
「う、ううん? なんでも、ないよ……あ、ありがとう、葉村くん!」
「おう」
「ハム男はどうせカエリーナタンなんでしょ?」
「違ぇよ。俺は学んだんだよ。自分の好きなモン相手に押し付けても意味ねーって」
「ほ、本当? 葉村くん!!」
「おう」
「すごーい、ハム男が進化した!! ねえねえ空閑くん、ハム男に何もらったの?」
「あ、はい! ええと……」
がさがさ
「…………」 ←手元を見て固まる
「…………」 ←空閑の手元を見て固まる
「…………」 ←葉村を凝視する
「あ? なんだよ」
「ハム? あの、どう見ても『いつもの魔物(カエルのカエリーナタン)』なんだけど?」
「ちげーよ! どこをどう見たらカエリーナタンなんだよ!
 色が違うじゃねーか! 後ポーズも違うだろ!?」
「固定ポーズなんてあったっけ……?
 まあ、緑色の時より更に気持ち悪いしきわどいのだけは分かるけど……」
「これ……」
「ね、気持ち悪いよね?」
「このどどめ色……第52話で出てきた、敵の“カエリーナタンもどき”……!」
「え……?」
「お、流石空閑! 先輩、アニメ一緒に見てるくせに全然覚えてねーのな」
「一度しか出ないようなキャラ覚えてられないもん」
「一度じゃねーし! 何度かでてきてるし!」
「葉村くんありがとう!」
「おう!」
「えっ、嬉しいの?!」
「これ、限定100体のプレミア物なんです!
 発売と同時に売り切れちゃって幻の品って言われてるんですよ!」
「そ、そうなんだ……」
「……その幻の品を手に入れたガッツとファイトだけは買うよ、ハム男」
「なんでチョイスしたセンスは買わねーんだよ」
「でも、本当……ありがとう、葉村くん。プレゼント、嬉しいよ」
「お、おう……」
「俺も後で渡すね!」
「わあ、ありがとうございます!」
「おお、空閑くん。こちらにいらっしゃいましたか」
「うん、どうしたの? 菅野さん」
「今日は空閑くんの“はっぴーばーすでー”なので、こちらをお渡ししたく」
「え、もしかして僕に……?」
「はい」
「わあ、なんだろう」
がさがさ
「…………」 ←手元を見て固まる
「…………」 ←空閑の手元を見て固まる
「あ、これって“カエリーナタン・プロジェクトグラビアポーズ☆彡”のやつ?」
「良くご存知で。これは第一弾のものです」
「ええと……? 誰か、説明を……?」
「いろんなグラビアポーズをカエリーナタン(緑)で網羅しようっていうプロジェクトだ」
「隙間産業にも程があると思うんだけど」
「…………」
「(空閑くんがカエリーナタンをじっと見つめながら微動だにしなくなった……)」
「あの……どうしてスガちゃんは、これを?」
「空閑くんと葉村くんが良くカエリーナタンのお話をしていらしたので、
 お好きなのかと」
「あれは会話じゃなくて、ハム男が一方的に語ってるだけな気が……」
「良かったな、空閑!」
「う、うん……! あの、ありがとう菅野さん!」
「いえ。いつも良くして頂いておりますし、こちらこそありがとうございます」
「そんな……あの、これ、机の上に飾るね?」
「はい」
「(……すごい、なんとなく丸く収まった……)」
「じゃあ、早速部屋に持って行くね!」
「おい空閑! 俺がやったカエリーナタンもどきも持ってけよ!」
「あ、ごめん忘れてた……」
「お前」
「折角だから、玄関に置く? 福の神的な……」
「お前プレミアモンなんだから剥き出しじゃなくてせめてケースくらい買ってくれよ」
「その前に、みんなの目の触れるところはやめよう?
 お客さんがそれ見たら卒倒しちゃうよ……妖怪が出たって……」
「しかし、随分とそちらのカエリーナタンはセクシーなポーズですね」
「ちょっと存在がR-18だよね……」
「お前さっきは喜んでたじゃーか! なんで今ちょっと引き気味なんだよ!」
「皆ー、米原先生がご飯にするってー」
「あ、はーい!」
「ケーキがありますよ、空閑くん。私も作るのを手伝いました」
「本当? 楽しみだなぁ……」
「ん? その妖怪フィギアなに? アニメかゲームのキャラ?」
「ふざけるな妖怪じゃねーし!」
「ああ、じゃあカエリナータンか……」
「良く分かったね」
「いえ、彼が憤慨する理由が他に見当たらないので」
「…………」
「……あの、空閑くん」
「うん、どうしたの?」
「少々お耳を貸して頂いても宜しいでしょうか」
「? うん。じゃあ、ちょっと屈むね。……このくらいでいい?」
「はい、ありがとうございます」
「……お誕生日、おめでとうございます。正臣くん」
「…………」
「……うん! ありがとう、風羽ちゃん」
END.

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