※この小冊子にはネタバレが含まれる場合があります。試し読みの際もお気を付けください。








葉村サンプル

「お前も、可愛いよ」
「…………」
 化粧はとっくに済んでいた。ピンクのエプロンの下だって、以前俺と出かけた時に購入した落ち着いた色の大人っぽいワンピースだ。
 風羽の顔はみるみる内に赤くなっていった。……まあ俺の顔も赤いだろうからお互いさまだろう。
「えっ……と、チョコだって?」


空閑サンプル

時刻は十八時ちょっと過ぎ、彼女はこれから夕食を作り始めるらしい。 
 ……どうしよう、僕と葉村くんの作戦は、夜空が見えるところでないと功を奏さない。
「……あのっ、風羽ちゃん!」
「はい、どうされました? 正臣くん」
「きょ、今日は、サファイアのような夜空、だねっ!」


広瀬サンプル

「人付き合いを大切にすると豪語していた貴方はどこに」
「それとこれとは別だよね。地域に貢献するのは別に良いよ。だけどねえ」
「ハロウィンは別に恋人同士で過ごす日ではありませんよ」
 ……おや? 今日はやけに食い下がるじゃないか。
「何? そんなにふたりっきりで過ごすのは嫌?」


法月サンプル

「はい。一月は素敵なイベントも多いですし」
「例えば?」
「七草粥に鏡開き。美味しいです」
「見事に食べ物ばっかりだね」
「おお、確かに。……勿論先輩の誕生日も忘れてはおりません」
「ふふ、ありがと。……ほら、みかん。あーんして」
「あーん……もくもくもく。……おお、今年のみかんは甘いです」


米原サンプル

「おお、確かに。気を付けます」
「いや、別に気をつけなくても良いけどさ」
「良いのですか? 気をつけなくて」
「ああ。弱気なお前も味わい深い」
「ふふっ。ではスルメ菅野、もしくは干し椎茸菅野とお呼びください」
「うーん、雰囲気がすっ飛んでったなー。あ、でも弱気な部分を出すのは俺の前だけでな?」


戸神サンプル

「気付いてしまわれましたか。しかし濡れているのは頭だけです」
「ったく、身重が何してやがるんでェ! まずは風呂に入ってこい!」
「湯浴みはしたのです。ですが、髪を乾かす前に旦那様を起こしてしまい」
「お前ェよォ……いや、そんなことより今は乾かすのが先だな。やってやるからそこに座っとけ」


千木良サンプル

「……はっ、もしや寝る間も惜しんで免許に関する勉強を!」
「ちゃうわボケ。こんなん頭に入れんのくらい朝飯前や」
「おお……ではどうしたというのです。よもやお仕事が順調ではないなど」
 視線を落とした風羽の頭に再度手を置き、気遣うように撫でる。
「お前はそないな心配せんでもええねん」