夏。
 
いつもの様に、カレーに入れる食材を海まで探しに来たカレー部(元風紀委員会)の面々は、ついに伝説の海の人に遭遇する。
 
彼の名前は沢登譲(日本語発音だと)。
 
たまたま丘に上がって甲羅干しをしていた彼は、町の性悪チルドレン達に囲まれ、止むを得ず最終奥義を繰り出す直前だった。
 
伝説の海の人の得意技。その名はブラックスワン。
 
人が見ると、一週間の内に悶え苦しみながら、最後には何故か恍惚の表情を浮かべ死に至るという恐ろしい技(テク)である。
 
そんな起こりかけた大惨事を未然に防いだのは、海の人に異常なほどに精通しているカレー部担任、真朱柑(24)その人であった。
 
海の人とコンタクトを続けること、15分。
 
なんと、海の人が自宅に連れて行ってくれると言う。
 
喜びに咽ぶ真朱柑とカレー部面々。(見ようによっては真朱柑以外は苦い表情をしていたと一説には語られるが)
 
「先生! ツイニヤリマシタョ!」
 
「ヤッタ! ヤッタァッ!」
 
「お前らなんで片言なんだ!! 乃凪に至っては、語尾の『ョ』が小さくてなんか腹立つ!!」
 
理不尽な怒りを露にした真朱柑だったが、海の人の笑顔に諌められた。
 なんか良かった。(←真朱柑の個人的感想)
 
(本題に戻り)海の人の話によると、彼の自宅は水中らしい。
移動手段には、彼の背中に乗るのが一般的でポピュラーだと語る、海の人。
 
喜び勇んで彼の背中に馬乗りになろうとした瞬間──、
 
「ハツノリ 二万カラダケド オケ?」
 
「何でみんな片言?!」
 
「いや、まずお金取ることに驚いたらどうですか? つか二万って高いなオイ」
 
部員に冷静に突っ込まれ、すごすごと海の人の自宅訪問を諦めた真朱柑だった。
 
「えーと、給料前で財布の中が寂しいから、自宅にはまた今度誘ってくださいネ」
 
「なんかノリちゃんの小さい『ョ』より、先生の『ネ』がカタカタの方が軽くイラっとくるよ」
 
そんなこんなで、カレーに入れる食材を探すのを忘れ、学校に帰ったカレー部面々でした。
 
おしまい。